Silent Garden
9月12日、CDのアルバムが届いた。長屋和哉氏の五年ぶりの待望のニューアルバムである。
タイトルは、『Silent Garden』。
梱包をときほどき、早速CDを出してみる。ジャケットの写真に目が止まった。おそらく冬の八ヶ岳近郊の森とどんよりとした雲に閉ざされた空の写真であるが、それを見た瞬間、自分がその冷厳の森の世界に連れ込まれた。よく、冬はモノトーンに例えられるが、実はそうではない。光の加減では青くも紫でもある。そんな森の静寂の中で、冬特有のピンと張り詰めた空気を感じ。時折舞い降りる雪を感じながらCDを聞きはじめた。
「・・・静寂の森に、音もなく雪が降り積もるように、静かに舞い落ちる音たち・・・」(説明文より抜粋)
まさしく、そんな感じだった。
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長屋氏は、TINGARAのHideoさんから紹介された。最初は、Hideoさんのホームページで。
長屋氏が出したエッセー本、「すべての美しい闇のために」と氏の紹介だった。そのタイトルに打ちのめされた。なんて美しいフレーズで、なんて深い闇を感じさせるのだろうと。闇のコントラストをアナログで表現できる人はそうそういない。
それからしばらくして、今年、その本人とお会いできる機会があった。Hideoさんの主催するギャラリーでのライブがあったのだ。その日、ライブの後、バーボンを酌み交わしながらいろいろな話をした。さらに、本人に会ったことで、さらに惹かれていった。
東京の夜景をつまみに、大好きな人たちと飲む酒はうまい。
いずれ社交辞令的に交わした約束を何とか果たせまいか、現実的に考えている。
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そんな記憶をたどりながら、ジャケットをめくった。サインとともに、奏でた詩が脳天を震い起こす。
その中の一節、
~ 記憶は水底で色彩を失う ~
に、目が止まる。
近くを流れる川底に横たわる、鱒の目を思い出した。色あせて白くなった目。それが私を見ていた。
そして、『Realm of the North』から音が雪になって深々と降り始めた。
長屋氏の音楽は、流し始めると結界を張る。そして、日常とは違う異次元に誘う。
その世界では、虚無感、孤独感、無力感を感じる。そして、すべての鎧を脱いだ自分が、その空間で自分を認識する。私は一人の虚無僧となり修行を思い出す。長屋氏の音楽をそんな風に私は感じている。
まだまだ、このアルバムは聴きはじめたばかりだが、北の人間が普段感じる冬が捉えられていると思う。猛暑が過ぎたばかりだが、私の中には冬の森ができた。
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